Research

資源生産型革新的下水統合膜処理(MBR+)システム

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図. MBR+システム

MBR+システムはメンブレンバイオリアクター(MBR)を中心に水処理と汚泥処理を一体化させた水・バイオマスの生産及び栄養塩回収・固定化を実現する。下水処理及びその再利用を促進し、循環型社会、低炭素社会の実現に貢献する資源生産型革新的下水統合膜処理システムである。

本システムは3つのモジュール要素技術開発に分けられる。

  • 汚泥生産モジュール: 傾斜管汚泥濃縮槽に超コンパクト機能性中空糸膜モジュール組み込んだ好気バイオマス生産槽を組み合わせることで滞留時間2時間の処理の省エネルギー運転を実現する。

  • 栄養塩固定化・発電・水生産モジュール: ナノろ過(NF)膜や逆浸透(RO)膜、正浸透(FO)膜等の膜分離技術を活用し、栄養塩固定プロセスと組み合わせて再生水と窒素・リン固定を同時に達成する。

  • エネルギー生産・資源回収・有害物固定化モジュール: 汚泥の水熱ガス化により水素生産を行いエネルギー生成を実現する。

以上を統合し、MBR+システムとしてエネルギー自立運転を達成しつつ資源生産を行なう。


汚泥生産モジュール:傾斜管付きMBR(it-MBR)

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図.傾斜管付きMBR (it-MBR)

 本テーマでは、MBR(膜分離活性汚泥法)を中心として、実下水より再生水の生産及び栄養塩回収・固定化を実現するシステムの開発を目指している。

 傾斜管を挿入した汚泥濃縮槽と浸漬型膜分離活性汚泥生産槽からなり、itMBR(itとは機能としてin-line thickener、デバイスとしてinclined tubeを意味する)と称する。無酸素槽に導入された傾斜管(Inclined tube)が汚泥の沈降を促進し、汚泥の大部分を無酸素槽内にとどめる。そのため、好気槽内のMLSS濃度を相対的に低く保つことができ、膜分離への負担が軽減される。無酸素槽で濃縮された高濃度汚泥(20 g/L)はバイオマスとして回収する。

 開発の第一のねらいは汚泥生産に特化することであり、沈砂池後の実下水を流入させ、濃縮槽を通過後、2時間以下の滞留時間で運転を行っている。短い滞留時間による高負荷運転により、汚泥の自己酸化による減少分を極力抑え、高い汚泥生産効率を維持するとともに、装置のコンパクト化が実現できる。

 加えて、硝化の抑制にも大きなねらいがある。窒素のマネジメントは後段の栄養塩固定化モジュールに担わせることで、従来の生物学的硝化脱窒プロセスからの脱却を図る。そのことにより、汚泥生産モジュールにかかる消費エネルギーの徹底的な削減が図られる。浸漬する膜モジュールについても、新たに開発した超コンパクト平膜型中空糸ハイブリッド膜モジュールの利用を想定している。


栄養塩固定化・発電・水生産モジュール:
正浸透膜ろによるMBR処理水からの栄養塩濃縮・固定化

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図. 正浸透膜ろ過プロセスを中心とした統合膜システム

 栄養塩固定化・発電・水生産モジュールでは、前段の汚泥生産モジュールの処理水から栄養塩を濃縮・固定化することを第一の目的とする。ここでは統合膜システム(HMS, Hybrid Membrane System)として様々なオプションを想定している。

 開発の中心は、正浸透(FO, Forward Osmosis)の活用にあり、海水の持つ化学ポテンシャルを活用することで、栄養塩濃縮プロセスの徹底的な省エネルギー化を図る。さらにFOの前段に落差を設けることで、水力発電によるエネルギーの創出も構想として含んでいる。

 また、再生水利用の需要がある場合には、逆浸透(RO, Reverse Osmosis)膜ろ過による栄養塩濃縮と再生水の同時生産も想定している。さらに、膜蒸留を組み合わせることで、栄養塩の超高濃縮と濃縮水量の徹底的な削減も図ることができる。


エネルギー生産・資源回収・油外物固定化モジュール:
超臨界水ガス化によるエネルギー生産と資源回収・有害物固定化

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図. 超臨界水ガス化システム

 下水汚泥の流動化プロセス、無機塩類の除去・回収プロセス、水熱ガス化プロセスで構成される超臨界水ガス化システムについて設備設計からエネルギー収支計算、コスト分析を通じて導入可能性を検討する。
 これまでの検討で、本システムにおいて回収した熱を施設内で効率的に運用することによりエネルギー自立型下水処理場の実現が可能であることが示唆された。また、コストについても同規模の焼却施設やメタン発酵施設に比べて建設コストは30-50%程度と低いことが確認された。


資源回収型多機能膜処理システム BMBR

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図. 仕切り板挿入型MBR (BMBR)の運転

 本研究テーマでは、仕切り板挿入型MBR (baffled MBR; BMBR)の運転の効率化を目指す。本MBRにおいては、水位の変動幅がMBR反応槽内に設置された仕切り板上端部を跨ぐように設定されており、仕切り板外部において好気条件と無酸素条件が交互に創出される。

 これまでの検討において、本MBRにおいては、適切な運転条件を設定することによって単一反応槽で窒素及びリンを同時に除去できることが明らかとなっている。本研究期間においては、BMBRの運転コストを低減すべく低曝気風量型曝気装置の開発を行う。

 また、BMBRにおけるリン除去機構の解明を通じて、BMBRの設計指針を確立する。同時に、すべてのMBRにおいて共通の問題である膜ファウリングを抑制することができる運転条件を確立するために、膜ファウリング発生機構についても詳細な検討を実施する。


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